着床障害

Implantation failure


着床障害

着床障害とは体外受精で良好な受精卵を何度か子宮に戻しても妊娠に至らないことを指します。着床を阻害する因子としは子宮内膜ポリープ、子宮筋腫、凝固系の異常、免疫異常、子宮内膜着床時期のずれなどが考えられます。

当院では子宮内膜着床能(Endometrial Receptivity Analysis:ERA)検査を開始しました。そのほか、凝固に関連する血液検査、免疫検査(Th1細胞/Th2細胞)なども行っております。

子宮内膜着床能(Endometrial Receptivity Analysis、ERA)検査

検査の目的

子宮内膜着床能検査(ERA)は、良好胚を複数回移植しても着床しない、反復着床不全に対する検査で、着床に最適なタイミングを調べることを目的に行います。
胚と子宮内膜の着床ウィンドウのずれが起きているかどうかを調べることで、最適な移植実施日を決めることができます。

報告によると、ERAの検査を受けた25%の患者様で、移植のタイミングがずれていたという結果が出ています。

検査方法

子宮内膜の着床能を確認するため、移植周期とは別に検査のための周期を設け、自然周期の場合はLHサージ 7日後、ホルモン補充周期の場合は黄体ホルモン投与5日後に子宮内膜の組織を採取します。

子宮内膜の採取は専用の細い管を膣から子宮内へ挿入し、診断に必要な量の組織を採る侵襲性の低い手法となっています。痛みも少ない手法のため、麻酔は使用せずに実施します。

採取された検体はスペインにある検査会社Igenomixに送られ、ERA検査が実施されます。検査結果が当院に届くのは、通常2~3週間後となります。

検査結果で、「子宮内膜の状態が着床に適している」と判定された場合は、次回の周期からも検査時と同様の方法で、移植の準備を進めます。

結果が「子宮内膜の状態が着床に適していない」との判定が出た場合は、2周期目のERA検査を行います。検査の基本的な流れは1周期目と同じですが、子宮内膜の採取日が異なります。

検査費用

当院でART治療中の患者様は、ERA検査費用 165,000円となります。この1周期目の検査で再検査が必要となった場合、2周期目の検査費用は154,000円となります。

上記費用は全て税込み表示となっております。ホルモン検査や薬剤等のその他ERA検査以外の費用は含まれておりません。

当院でART治療を行っていない患者様は検査を受けられません。

難治性着床不全に対するPFC-FD療法

PFC-FDとは

近年、難治性着床不全に対する新しい試みである多血小板血漿(platelet-rich plasma:PRP)療法が注目されています。患者様自身の血液から抽出した高濃度の血小板を子宮内に注入する方法です。血小板細胞に成長因子を含むため、PRP療法により子宮内膜の環境が改善され胚が着床しやすくなると考えられています。

今回当院ではこのPRPを改良した自己血小板由来成分濃縮物PFC-FD療法(Platelet-derived Factor Concentrate-Freeze Dry)を開始することとしました。自己血小板由来の成長因子を抽出・濃縮し凍結乾燥させたものを治療に用います。同量の血液から作成した場合、PRPに比べ、PFC-FDに約2倍の成長因子が含まれていると言われています。

対象者

  1. PFC-FDは感染症検査(HIV、HBV、HCV、梅毒、HTLV-1)で陰性の方のみ作製が可能です。
  2. 凍結胚移植を予定とする体外受精治療中の方を対象としています。希望者はどなたでも治療可能ですが、複数回移植不成功者が主な対象となります。

治療の流れ

  1. 血液採取、PFC-FDの作製
    採血は、一般的な方法で当院にておこないます。約50mlの血液を採取します。採血した血液をセルソース再生医療センター(特定細胞加工物製造許可施設、厚生労働省認可)へ搬送しPFC-FDを作製します。約3週間で完成します。作製したPFC-FDは約半年間保管することができます。
  2. 胚移植する前にPFC-FDを子宮内へ注入
    凍結胚移植周期の胚移植する前に、月経周期(月経が始まった日が1日目)の10日目頃、12日目頃に2回PFC-FDを子宮内に注入します。

留意点

  1. 自己血小板由来成分濃縮物(PFC-FD)を用いた治療は、すでに、整形外科・歯科・皮膚科等で行われていますが、新しい治療法でまだまだ確立された治療法ではなく、十分な実績のある治療ではないことをあらかじめご了承ください。
  2. ごく稀に、採血による気分不良や子宮内注入による子宮内感染を生じる場合があります。
  3. 体調の良くない場合や血液の状態によっては、ごく稀に作製が出来ない場合もあります。その際には再度採血をお願いする場合があります。また、医療機関からの血液を輸送する際に破損があった場合は、再度採血をしていただく必要があります。

検査費用

  1. 保険適応ではなく、自費で220,000円(税込)となります。PFC-FDの作製および2回子宮内注入の費用が含まれます。
  2. 感染症検査(HIV、HBV、HCV、梅毒、HTLV-1)で陰性の方のみ作製が可能です。感染症検査歴ある方でも作製時再度感染症検査を行っています。感染症検査陽性の場合は、感染症検査費用として11,000円(税込)のみお支払い頂きます。
  3. 血液の採取後やPFC-FDの作製後に同意を撤回された場合など、同意を撤回される時点までに費用が発生している場合は、発生した費用についてはご負担いただきますのでご了承ください。

診療案内

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